まだ人影もまばらな休日の街に、愛車のフォルクスワーゲン パサートをすべらせた。
新しい車両が入ったという店主からのメールを受けては、 いつも通り遅くまで寝ているわけにもいかない。
息子に譲ったつもりが、 まだまだ卒業できないNゲージ(*)。 熱中しすぎてついつい独占してしまう僕には、妻もいささか 苦笑気味だ。
そんなおやじの背中を見て子供は育つのか、はたまた父と子っていうのは似るものなのか、僕のNゲージ熱に対抗するように、近頃では彼が僕のオーディオを支配しようとしている。
レコード盤に針を落とす表情がなかなか堂に入っている小さな マエストロ(*)が、メロディーに合わせて振るのはタクト代わり のポッキー。
ここ数日は、ブラームスを相手に熱演を繰り広げるのがお気に 入りらしい。
Nゲージとレコード・・・これではまるで逆転だが、親子で 楽しむ趣味、それもまたいい。
-fin
---------------------------------------------
* Nゲージ・・・鉄道模型。レール巾9mm(NINE)の頭文字をとってNゲージ
と呼ぶ。30代半ばの諸氏には懐かしの遊びアイテム。
* マエストロ・・・イタリア語で巨匠の意。指揮者のことをこう称する。
ちなみにタクトとは指揮棒のこと。
---------------------------------------------
好きなことに没頭するというのは、いつの時代も楽しいもの。
そんな趣味のアイテムを、いつもの空間に置いてみる。
ルアーやカメラ、つくりかけのミニチュアハウス…
何気ない部屋の一角が、子供の頃の秘密基地のようにキラキラ 輝いて見えてくるから不思議だ。
“大人の秘密基地”という感覚も悪くない。
(田)
■次号vol.3■
レッスン編 「Public or Private ?−1ルームの暮らし」
presented
by MAISON de DESSIN
|